アスベストを含む屋根について、健康被害が噂されることから改修工事を慎重に検討されている工場関係者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では「そもそもなぜアスベストは禁止になったのか」という歴史的背景から、
アスベストを含む屋根の工事方法と注意点について解説いたします。
アスベストとは
アスベストとは、別名「石綿(いしわた・せきめん)」と呼ばれる天然の鉱物繊維のことです。
比較的軽量で耐熱性が高いことから、建材製品として1955年ごろから使用され始めたと言われています。
しかし、表面繊維が非常にきめ細いことから、空気中に飛散しやすく、肺線維症(じん肺)や悪性中皮腫などの原因になり、肺がんを引き起こす可能性があることがわかりました。
そのため、現在では日本国内での製造・輸入・使用などは一切禁止されています。
アスベストの種類
アスベストは「蛇紋石族」と「角閃石族」に大別され、合計6つの種類があります。日本国内では、クリソタイル・アモサイト・クロシドライトが代表的に使用されていました。
— アスベストの種類 —
■ 蛇紋石族
・クリソタイル
■ 角閃石族
・クロシドライト
・アモサイト
・アンソフィライト石綿
・トレモライト石綿
蛇紋石族
蛇紋石族としては、クリソタイルが挙げられます。
世界中で使用されていたアスベストの9割以上を占めるものです。
その直径は0.02μmと非常に細く、人の目では確認できないと言われています。
角閃石族
角閃石族としては、クリソタイル以外の5種類が挙げられます。
クロシドライトとアモサイトは、いわゆる「吹き付けアスベスト」として使用されていました。
吹き付けアスベストとは、アスベストにセメントと水をかき混ぜて、機械で吹き付けたものです。
クロシドライトは高圧管に用いられるのが一般的で、青色に仕上がる点が特徴です。
一方で、アモサイトは断熱保湿剤に用いられるのが一般的で、茶色に仕上がります。
その他のアンソフィライト石綿・トレモライト石綿・アクチノライト石綿に関しては、他のアスベストの不純物として含まれています。
参照:独立行政法人 環境再生保全機構
アスベストが使用禁止になった時期や理由
日本国内でも、戦後は海外から年間30万トンほどのアスベストを輸入していた時期がありました。
しかし、1972年にILO(国際労働機構)やWHO(世界保健期間)がアスベストの発がん性を認めたことをきっかけに、
その後は下記のような規制を経て、現在では新たな製造・輸入・使用が禁止されています。
— アスベストに関する規制 —
● 1975年:特定化学物質等障害予防規則 改正
→ 含有量5%以上の石綿の吹き付け作業が原則禁止へ
● 1995年:労働安全衛生法施行令&特定化学物質等障害予防規則 改正
→ アモサイト、クロシドライトの製造・輸入・使用などが原則禁止へ
→ 含有量1%以上の石綿の吹き付け作業が原則禁止へ
● 2004年:労働安全衛生法施行令 改正
→ 石綿を含有する建材・摩擦材・接着剤などの製造が原則禁止へ
● 2006:労働安全衛生法施行令 改正
→ 含有率が0.1%を超える石綿の製造・輸入・使用などが全面禁止へ
とくに2000年代には、国内大手機械メーカーの工場で勤務していた従業員やその家族らが死亡した事件が報道されて移行、
通称「アスベスト問題」と言われる社会的問題にまで発展しました。
これから新たに設置される建物にはアスベストが含まれることはありませんが、一方でこれまで(2004年以前)に設置された建物には、今でも含まれている可能性があります。
厚生労働省によると、含まれていること自体が問題ではなく、大量に飛び散ることに問題があるようです。
“石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
……アスベストを吸い込んだ量と中皮腫や肺がんなどの発病との間には相関関係が認められていますが、短期間の低濃度ばく露における発がんの危険性については 不明な点が多いとされています。
現時点では、どれくらい以上のアスベストを吸えば、中皮腫になるかということは明らかではありません。”
出典:厚生労働省
そのため、劣化による粉塵がなければ直ちに撤去する必要はありませんが、改修工事を行う場合には、知見を有する専門業者に依頼をする必要があるでしょう。
アスベストの建物への使用
アスベストは、ビルやマンションのボイラー室や、駐車場の屋根や壁のような大きな建築物だけでなく、戸建て住宅でも使われていました。
建物への使用方法は、アスベストと他の材料を混ぜた成形板を屋根や壁等の建材としたり、柱の耐火被覆や吸音用等の吹付材として使用する方法がありました。
建物にアスベストが使用されていた場合の代表的な除去方法について、紹介していきます。
除去工法
除去工法とは、アスベスト含有建材を完全に取り除く工法です。作業中にアスベストが飛散してしまわないように、しっかりとした安全管理をおこなう必要があります。
封じ込め工法
封じ込め工法とは、アスベストはそのまま残し、上から薬剤を含浸して固定する工法です。作業時間も短く、除去工法に比べて安価ですが、建物の解体時にはアスベストの除去作業が必要となります。
囲い込み工法
囲い込み工法とは、アスベストはそのまま残し、他の建材で覆うことで飛散を防ぐ工法です。封じ込め工法と同様に、除去工法より短時間で安価な工法ですが、建物の解体時にはアスベストの除去作業が必要となります。
アスベストを含んだ屋根の工事方法
アスベストが含まれている屋根材として、代表的なものがスレート屋根です。
昨今主流である折板屋根と比較して価格が安く、さらに軽量で倒壊の心配が少ないことが特徴として挙げられます。
スレート屋根は「天然スレート」と「化粧スレート」の2種類に大別されますが、
2004年以前に建てられた屋根には、耐久性を高める目的からアスベストが含まれている可能性が考えられます。
スレート屋根はアスベスト含有建材の中では発じん性の比較的低い建材なので、酷い劣化状況でなければ飛散することはありませんが、
屋根の寿命や劣化状況によっては改修が必要になる場合があるでしょう。
専門業者に依頼をした場合、下記いずれかの方法で工事を行うことになります。
カバー工法
カバー工法とは、既存の屋根上から新しい屋根を被せる工事方法のことです。屋根を撤去する必要がないため、工事費用を比較的安く抑えることができます。
また、屋根が二重になるため耐熱性が高くなる点が特徴的です。
一方で重量が大きくなるため、建物に負担がかかってしまう点がデメリットとして挙げられます。
耐震性の低下が懸念されるほか、建物の状況によってはそもそも設置が難しい場合がある点には注意が必要です。
■ 1平米あたりの費用相場(波形スレートの場合)・・・ 8,000円〜10,000円前後
葺き替え
葺き替え工事とは、既存の屋根を撤去して、新しい屋根を設置する工事方法のことです。新しい屋根にすることで、耐久性が高くなるほか、景観が良くなるなどの特徴があります。
一方で、屋根の撤去費用がかかるため、カバー工法よりも工事費用が高くなる点に注意が必要です。
■ 1平米あたりの費用相場(波形スレートの場合)・・・ 24,000円〜30,000円前後
※上記でご紹介した工事費用はあくまで目安になります。
実際の費用は、工事会社・工事内容・工事時期によって変動しますので、詳細は専門業者にお問い合わせください。
アスベストを含んだ屋根工事の注意点
大気汚染防止法の改正に基づき、原則すべての解体・改修工事で専門知識を有する有資格者によるアスベストの事前調査が義務化されました。
事前調査結果の報告は、アスベストの有無にかかわらず、以下に該当する場合は必要です。
・解体する場所の延べ床面積が80㎡以上の解体工事
・請負金額の合計で税込100万円以上の改修工事
スレート屋根の改修工事も、有資格者による事前調査をおこない、請負金額が税込金額100万円以上であれば報告が必要です。
事前調査の流れ
アスベストを含んだ屋根を工事する際には、必ず実績のある専門業者に依頼をしましょう。
実績のない専門業者に依頼をするとトラブルに繋がる可能性があるほか、不当に高い金額を請求される可能性も考えられます。
ホームページで工事実績を確認したり、複数社に相見積をして確認したりなど、慎重に発注先を検討するようにしてください。
アスベストを含んだ屋根の工事は
綿半ソリューションズにおまかせください
工場施設の屋根工事を実施したい場合には、ぜひ綿半ソリューションズにおまかせください。
弊社は約40年の間、全国各地の工場施設でカバー工法を用いた屋根工事を行ってまいりました。
その施工数量は累計600万㎡以上で、自動車・航空・電気機器など、お客様の業種を問わずに工事をご提供しています。
また、独自の開発施設「綿半技術センター」では、常に工法の改良・開発を行っており、他社には負けない技術力を誇ります。
カバー工法では「インダイレクト工法」という、外壁に穴を開けない工事方法を採用しており、粉塵や漏水を防ぎつつ工事を進めることが可能です。
法令にもとづいて工事を行うため、アスベストの飛散が気になるという方でも安心して工事をお任せいただけます。
無料で現地調査に伺いますので、少しでもご興味のある方はまずはお気軽にお問い合わせください。