工場の壁の改修工事を検討している方は、アスベスト建材が使用されていないか気になるのではないでしょうか。アスベスト含有建材が使用されているかどうかは、築年数から判断できるほか、設計図や建材の表面からも確認できる場合があります。本記事ではアスベスト建材が使用されている可能性がある場所や、アスベストを見分けるための方法について解説します。
アスベストとは

アスベストとは、石綿(いしわた・せきめん)とも呼ばれている天然の鉱物繊維のことです。軽量かつ耐久・耐熱性に優れており安価で利用できることから、天井や屋根、外壁などの建材として多くの建築物に使用されていました。
しかしアスベストは繊維があまりに細かいため、研磨機や切断機を屋内で使用する場合は空中に浮遊した繊維を吸い込んでしまう可能性があります。アスベストは繊維に問題があるわけではなく、飛散した繊維を吸い込んでしまうことに問題があるため、除去処理を行う際は適切な対策が必要となります。
アスベストが危険とされる理由
空中に浮遊した繊維を吸い込んでしまうことで、肺線維症(じん肺)や肺がん、悪性中皮腫の原因になることがわかったからです。平成17年には、アスベスト建材を製造するメーカーの従業員が肺がんや悪性中皮腫により死亡していたことを発表。このことが発端となり、アスベストによる健康被害が「アスベスト問題」として注目を集めました。
現在ではアスベストの規制が進み、輸入・製造・使用が禁止されていますが、2006年以前に建てられた建築物のなかには、アスベスト建材が使用されている場合があります。吹付けアスベストが露出している場合は、劣化などの原因により繊維が飛散するおそれがあるため、2006年以前に建築された事務所や倉庫、店舗などは調査・除去などを行うことをおすすめします。
主なアスベスト関係法規の変遷
アスベストに関する法規の変遷は以下のとおりです。
年 | 法規・通達 | 法規・通達の概要 |
---|---|---|
昭和50年 (1975) | 特定化学物質等障害予防規則(特化則)の大改正 | アスベスト含有率5%を超える吹付け作業の原則禁止 |
平成7年 (1995) | 労働安全衛生法施行令の改正 | 茶石綿(アモサイト)や青石綿(クロシドライト)の製造・輸入・使用の原則禁止 |
特定化学物質等障害予防規則の改正 |
・吹付け作業の禁止対象がアスベスト含有率1%超まで拡大 ・除去作業の際は場所の隔離 ・防じんマスクや保護衣の着用 |
|
平成16年 (2004) | 労働安全衛生法施行令の改正 | アスベスト含有建材など10品目の製造などが原則禁止 |
平成18年 (2006) | 労働安全衛生法施行令の改正 | 含有率0.1%を超えるアスベストの製造・輸入・使用などが全面禁止 |
令和3年 (2021) | 大気汚染防止法(大防法)および石綿障害予防規則の一部改正 |
・規制対象が全てのアスベスト含有建材へ拡大 ・調査記録の作成、保存の義務化 ・事前調査(書面および目視)の義務化 |
令和4年 (2022) |
事前調査結果の報告義務化 ※一定規模以上の解体等工事のみ |
|
令和5年 (2023) | 有資格者による事前調査の義務化 |
戸建て住宅でアスベストが使用されていた場所

アスベストが使用されている可能性のある場所は、以下のとおりです。

※国土交通省「目で見るアスベスト建材(第2版)」より引用
また、使用されている可能性のある建材の種類や製造時期は以下のとおりです。
使用部位 | 建材の種類 | 製造時期 |
---|---|---|
壁や天井などの内装材 | 石綿含有けい酸カルシウム板第1種 | 1960~2004年 |
石綿含有せっこうボード | 1970~1986年 | |
石綿含有壁紙 | 1969~1991年 | |
床材 | 石綿含有ビニル床タイル | 1952~1987年 |
石綿含有ビニル床シート | 1951~1990年 | |
外壁や軒天などの外壁材 | 石綿含有窯業系サイディング | 1960~2004年 |
石綿含有建材複合金属系サイディング | 1975〜1990年 | |
・石綿含有スレートボード ・フレキシブル板 |
1952〜2004年 | |
石綿含有スレート波板 | 1918〜2004年 | |
屋根材 | 石綿含有住宅屋根用化粧スレート | 1961~2004年 |
石綿含有ルーフィング | 1937~1987年 | |
煙突材 | 石綿セメント円筒 | 1937~2004年 |
設備配管 | 石綿セメント管 | 〜1985年 |
建築壁部材 | 石綿発泡体 | 1973〜2001年 |
アスベストの使用が予想される屋根や外壁
一般住宅では天井などの内装材や屋根、外壁などにアスベスト建材が使用されている可能性があります。ただし一般住宅に使用されている多くのアスベスト建材はセメントなどで固められていることから、通常の生活において粉じんが飛散する可能性は低いでしょう。
屋根や外壁では、以下のようにアスベスト建材が使用されている場合があります。

※国土交通省「目で見るアスベスト建材(第2版)」より引用
アスベスト含有壁材の見分け方

アスベスト建材を見分けるためには、以下のような方法が有効です。
●設計図・仕様書を確認する
●アスベスト建材を目視で判断する
●使用されている外壁材で判断する
一般的には、設計図や仕様書などを確認してアスベスト建材の使用の有無を判断する方法が有効とされています。アスベスト建材を目視で確認する方法や、使用されている外壁材で判断する方法は、専門の業者でも難しいとされているからです。設計図などの書面からアスベスト建材の使用が確認できなかった場合は、不動産会社や管理会社を通じて、工事業者や建築士などに使用の有無を確認するとよいでしょう。
明確な判断が難しい場合は専門業者への調査依頼が必要
設計図や仕様書を確認してもアスベスト建材が使用されているかわからなかった場合は、専門業者へ調査を依頼することをおすすめします。自分たちで判断できなかった場合でも、専門業者であれば実績や経験からアスベスト建材の使用の有無を判断できる場合があるからです。
専門業者が設計図や現場の建材を目視で確認して判断できなかった場合は、外壁材などのサンプリングを行い、分析して調査することになります。工場の解体・改修工事の際は原則として事前調査が必要となるため、早いうちに調査しておくと安心できるのではないでしょうか。
建材にアスベストが含まれていてもすぐに除去する必要はない

工場にアスベスト建材が使用されていることがわかったとしても、すぐに除去する必要はありません。屋根や壁、天井などに使用されているスレートボードなどは、セメントにより固められているため、アスベストの粉じんが比較的飛散しにくいとされているからです。
ただし解体・改修工事を行う際はアスベスト粉じんが飛散してしまいやすいため、湿潤機を使用した湿式作業を原則として、防じんマスクや保護衣を着用して作業を行うことが義務づけられています。
アスベストの飛散が問題になるケース

以下のようなケースにおいては、アスベストの飛散が問題になる場合があります。
●外壁の張り替えを行う場合
●外壁の劣化が目立つ場合
●外壁の高圧洗浄を行った場合
外壁の張り替えを行う場合
外壁の張り替えを行う場合は、事前調査が必要となります。建物の外壁に使用されているサイディングは取り外しが難しいため、切断などの方法により撤去することになるからです。サイディングにアスベストが含まれている場合は粉じんが近隣住宅へ飛散してしまうため、適切な飛散防止対策が必要となります。
外壁の劣化が目立つ場合
通常であれば外壁にアスベスト建材が使用されている場合でも、セメントなどにより固められているため、粉じんが近隣住宅へ飛散することはありません。しかし劣化による亀裂や損傷が生じた場合は、その箇所からアスベストが飛散してしまうおそれがあります。周囲の住人に健康被害を与えてしまう可能性があるため、外壁の劣化が目立つ場合は、封じ込めなどの飛散防止作業を行ったほうがよいでしょう。
外壁塗装などで高圧洗浄を行う場合
外壁塗装の際は、外壁の汚れを落とす必要があるため高圧洗浄を行います。しかし外壁にアスベスト建材が使用されている場合は、洗い流したアスベストが削れて近隣に流れてしまいます。そうならないように、高圧洗浄の必要がある外壁塗装などでは、事前調査が必要です。ただし高圧洗浄を行なわずに塗装の上塗りのみを行う場合は、事前調査を行わなくてもよいとされています。
アスベスト含有外壁の工事なら
綿半ソリューションズにおまかせください

本記事ではアスベストが禁止された背景や、アスベストが使用されている可能性のある場所について解説してきました。2006年以前に建築された工場では屋根や天井、外壁などにアスベスト建材が使用されている可能性があるため、気になる場合は設計図や仕様書を確認してみるとよいでしょう。
もし工場にアスベストが使用されていることが判明した場合、専門の業者へ工事を依頼してみてはいかがでしょうか。綿半ソリューションズでは、アスベスト建材に穴を開けない「インダイレクト工法」という工事方法を採用しており、粉塵や漏水を防ぎつつ工事を進められます。法令に基づいて工事を行うため、アスベストの飛散が気になるという方も安心して工事をお任せください。