工場の環境は、きつくて当たり前。
そんな時代は終わりました。
いまや労働環境の改善は、生産性の向上や従業員の定着、さらには採用力にも直結する、重要な経営戦略です。
それは単なるコストをかける「守り」の施策ではなく、優秀な人材を惹きつけ、社員がいきいきと働ける職場をつくる「攻め」の投資です。
本記事では、工場の労働環境に対する課題と解決策について解説していきます。
従業員の評価が高かった具体的な改善案も紹介するので、ぜひ最後まで目を通してください。
工場の労働環境に対する課題
まずは、工場の労働環境のよくある課題を3つ挙げます。
貴社の現場にも当てはまる場合、優先的に改善を検討しましょう。
● 暑い・寒いなどの温度環境
● 騒音や振動によるストレス
● 有害物質による健康リスク
暑い・寒いなどの温度環境
工場には機械からの排熱(輻射熱)や湿度の問題があり、気温以上に過酷な環境になりがちです。
実は暑い・寒いと感じるとき見るべきは気温ではなく、気温・湿度・輻射熱を組み合わせて算出される「WBGT値(暑さ指数)」です。
厚生労働省によると「中等度の作業(部品の組み立てなど)」の基準値は28℃、「激しい作業(重量物の運搬など)」では26℃とされています。
この基準値を超えた環境で作業を継続させることは、熱中症リスクを急激に高め労働災害につながりかねないため、早急に対策する必要があります。
騒音や振動によるストレス
騒音や振動は、法的に管理が義務付けられている経営リスクです。
労働安全衛生法および関連規則では、85デシベル以上の騒音レベルが予測される職場に対し、
作業環境測定(騒音レベルの計測)・発生源の抑制・防音保護具(耳栓など)の支給・対象者への特殊健康診断の実施が事業者に義務付けられています。
「ストレス軽減」という曖昧なものではなく、法的義務の履行・従業員の健康障害の予防・労災認定に伴う経営的損失を回避するための対策として取り組む必要があります。
有害物質による健康リスク
化学物質や粉じんの管理は、コンプライアンスの観点から厳格さが求められます。
具体的には、有機溶剤中毒予防規則第29条や特定化学物質障害予防規則第39条では、6カ月以内ごとに1回の健康診断が義務付けられています。
万が一健康障害が発生した際には、労災認定や重大な損害賠償問題に発展する恐れがあります。
有害物質を扱う現場では、健康障害を防ぐために、万全な管理体制を整えることが重要です。
工場の労働環境に対する解決策
ここからは、以下の観点で労働環境の改善案を考えていきます。
● 暑さ・寒さ対策
● 空気質改善
● 設備・機械の最適化
● 食堂・トイレの清潔
● コミュニケーション改善
暑さ・寒さ対策
まず「どこがどれだけ暑い(寒い)のか」を、WBGT値や温度センサーで測って見える化するのが一番です。
空調機の増設・更新、スポットクーラーやシーリングファン、遮熱シートやカーテンの導入などを組み合わせ、作業エリアごとに最適な環境をつくりましょう。
熱中症リスクの低減だけでなく、集中力や生産性の向上も期待できます。
屋根を改修するなら、葺き替えではなくカバー工法で二重にするのがおすすめです。
カバー工法で屋根を二重にすれば、操業を止めずに過ごしやすい室内に改修できます。
「WKカバー工法」とは?
空気質改善
粉じん・油煙・化学物質を含むミストが滞留する環境では、健康リスクだけでなく、設備故障や製品不良の原因にもなりかねません。
工場全体の空気の流れを設計し直し、クリーンな空気が循環しやすいライン配置にしましょう。
法令に対応することで、選ばれる職場づくりにもつながります。
具体的な空気の流れの改善方法は、次のページも参考にしてください。
気流改善対策
設備・機械の最適化
設備の配置を一度ゼロベースで見直し、「人が機械に合わせる」のではなく「機械を人に合わせる」発想で再設計することで、安全性と作業効率は大きく変わります。
昔のままの機械・レイアウトのまま増設を重ねていくと動線が複雑化し、ムダな移動や不自然な姿勢・過度な力仕事が発生しやすくなります。
設備を単体で考えるのではなく、ライン全体を最適化することがポイントです。
食堂・トイレの清潔
食堂・トイレ・更衣室といった共用スペースの清潔さは、現場のモチベーションや会社への信頼につながります。
清掃頻度やチェック体制をルール化し、におい・カビ・備品不足などの小さな不満を放置しない仕組みをつくりましょう。
コストを抑えつつ効果を出しやすい改善領域なので、すぐにでも着手することをおすすめします。
コミュニケーション改善
労働環境の不満は「言っても変わらない」と感じた瞬間に、離職検討やモチベーション低下へとつながる可能性があります。
現場の声を定期的に吸い上げるミーティングや改善提案制度などを通じて「言えば検討される」「結果が共有される」仕組みをつくりましょう。
話せる場を整えることで、現場が自走して改善していく文化が育ち、結果として労働環境も継続的に良くなっていきます。
行動の労働者環境の改善事例
最後に、労働環境の改善で良い結果につながった例を3つお話しします。
● 木屑自動排出装置でイライラを解消
● 高炉鋳床出銑作業を遠隔操作に切り替え
● 夏季の過酷な作業環境を集中冷却で改善
木屑自動排出装置でイライラを解消
ある自動車の試作部品を加工する現場で、木材の集塵機の清掃が手間がかかるとして問題視されていました。
月3回、1回平均8時間(合計月24時間)も機械を止め、作業者が防じん服とゴーグルを着用して手動で木屑を回収していたそうです。
しかも、大量の粉じんが舞う劣悪な環境は、作業者のイライラの原因にもなっていました。
そこで木屑が溜まる場所に、機械の停止・起動と連動する「自動開閉弁」を考案・約2万円かけて設置。
機械が止まると、フィルターのハタキ装置が作動し、自動で弁が開き、密閉された回収箱に木屑が落ちる仕組みにしました。
結果、清掃時間は月24時間から月3時間(1回1時間×3回)へと、毎月21時間もの工数(=人件費)削減に成功。
ゴーグルや防じん服等の重装備をすることがなくなり、作業がやりやすくなるとともに作業者のイライラが解消されました。
高炉鋳床出銑作業を遠隔操作に切り替え
溶けた鉄を扱う現場は、典型的な「3K(きつい・汚い・危険)」職場でした。
高温・粉じん・有害ガスにさらされながら、防熱衣や防じんマスクなどの重装備で働く、過酷な環境です。
職場生産委員会から、保護具(防熱衣・防熱・防じんマスク・遮光メガネ)を使用しないで働ける職場へ改善するよう言われていました。
そこで、思い切ってすべての運転機器を室内に移設し、現場の状況はモニターで監視する「遠隔操作」へと根本的に変更。
従業員を灼熱や粉じんから「完全に」隔離したことで、職業性疾病のリスクを限りなくゼロにしました。
ミスが許されない危険作業がなくなった上に「会社は本気で我々の安全に投資してくれた」という事実は、従業員の士気を高めました。
夏季の過酷な作業環境を集中冷却で改善
ブリキ製品の梱包作業場は、室温33℃、最高で39℃という夏場の過酷な暑さが長年の懸案でした。
品質管理のための「防虫網」が工場全体を覆っており、風通しが完全に遮断されていたため、常に汗だくで作業していました。
人の出入りや資材の搬入が多いこの現場では、全体を冷やすのはコストがかかりすぎます。
そこで、冷房機で生み出した冷たい空気を、扇風機を使って作業員が立つ作業行動範囲にピンポイントで送り込む、作業ポジションへの集中冷却を採用しました。
結果、作業員が体感する温度を効果的に低下させ、疲労度の軽減と作業効率の低下という2大課題を同時に解決できました。
まとめ
今回は、工場の労働環境のよくある課題から解決策まで具体的にお話ししました。
工場の労働環境を改善すると、従業員の間で評判が良くなり、採用しやすくなるなどのメリットがあります。
暑さ・寒さを根本的に解決したいなら、屋根を二重にして機能を高めるカバー工法を検討してみてはいかがでしょうか。
屋根と屋根の間に遮熱シートを敷き込むことで空調効率を高めたり、屋根の水漏れを改善したりできます。
元々ある屋根を撤去しなくて済むため、操業を止めずに対策したい方は、ぜひ検討してみてください。
「WKカバー工法」とは?
